チャイナ・ウォッチャーのなかに、じつにオモロイ書き手がでてきた
ーー以下「宮崎正弘ブログ書評」より抜粋編集
安田峰俊『もっとさいはての中国』(小学館新書)
著者の名前からお坊さんを連想したが、やはり当たり、お寺の息子さんだという。
さて本書を読んで、意表を突く企画力にまず驚かされた。
奥地ならどこへでも、なにしろ内陸国家で、百万人の虐殺をしたルアンダにいきなり飛ぶのだ。
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というのも、評者(宮崎)は、まず旧ソ連15ケ国と旧東欧の15ケ国合わせて三十の国々のチャイナタウンを取材してきた。
つぎにアセアン十ケ国のチャイナタウンを取材し、その延長で南アジア、すなわち「インド経済圏」(印、バングラ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ)のチャイナタウンを取材してきた。
昨今は南太平洋の島嶼国家におけるチャイナタウンの取材の途上で、フィジー、バヌアツ、トンガ、パプアニューギニア、東チモール、ニューカレドニア、そしてこれらの保護国だった豪とNZにおける急膨張のチャイナタウンを取材してきた。
未踏はサモア、キリバス、ツバルなど。
今週末にはソロモン群島へ行く。
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ところが本書の著者は、エチオピアで乗り換えて、遠く暗黒大陸と呼ばれたアフリカの、奥深い内陸国へ飛んで、中国の影響力やら中国企業の進出ぶり、同時にその失敗例を実際に中国人にあって取材している。
迫力にあふれる突撃ぶりもさりながら、取材ではいかに相手のこころに飛び込み、本音をひきだすか、その方法もさりげなく行間で語っている。
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ルアンダに進出した繊維工場を経営する中国人は現地で悪戦苦闘、著者の取材のあと、忽然と会社を売却し、どこかへ消えた。
すぐに移動するのも新華僑らの特質である。
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本書の際立った印象は、ルアンダは事実上の独裁だが、国民は大統領を支持している点で、中国モデルとやけに相性がよく、その特筆はカンボジアの独裁者フンセンとつながるという共通性の指摘だった。
人権や法治は軽視しても、経済発展がイイ、というわけだ。
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「欧米各国が、(アフリカへの)援助と引き換えに人権の擁護や民衆政治の体制の確立を求め」るのに対して、中国は内政に干渉せずに「発展途上国向けのビジネスに慣れており、コンプライアンスもゆるいことが多いため、やはりアフリカ諸国との相性がいい」。
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ルアンダもカンボジアも、そのほかの独裁的専制国家も、「西側諸国から批判されるかわりに中国との関係を深めている」のが現実である。
だから中国はミャンマーとイランにいま異常な力点を入れて近づき、国連での票集めばかりか、市場のシャアをがっちりと握ってしまうのだ。
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ほかに著者はバンクーバーの洪門会の流れをくむ秘密結社にも突撃するが、秘密結社の印象とはまったく異なって「しょぼい」爺さんたちがだべりにくるサロンという実態も暴く。
洪門会といえば、ゴルゴ13にも、凄まじいマフィアの元締めのように書かれ、エディマーフィーの映画(題名を忘れた)でも悪の伏魔殿のような画面があった。
世間一般に流布したイメージとこうも違うのか、という実態報告も新鮮である。
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この話題が香港大乱の舞台のひとつになった新界の「元朗」地区にも及ぶ。
元朗駅は7月21日に白シャツをきた愚連隊風の洪門会系マフィアが民主派を襲撃した場所として、急に知られるようになった。
多くが共産党にカネで雇われたヤクザと、背景を解説した。
ところが著者の安田氏は、近世の先住民の末裔で、縄張りを荒らされた怒りから行動に出たという、もっと原始的な要素を述べている。
じつは評者も、元朗へ行ったあと、タクシーで15分くらいの華僑の城跡へ行き取材したことを思い出した。
その城郭の中にひしめき合うように香港原住民が暮らしていた。
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さて巻末にはお騒がせ人間の郭文貴に会いにNYへ飛んでいる。
郭文貴はトランプの戦略補佐官だったスティーブ・バノンと親しい。
そして王岐山のスキャンダルを次々と暴いて世界中の華僑から拍手喝さいをあびた暴露屋だ。
が、その懐に飛び込むという離れ業、チャイナ・ウォッチャーのなかに、じつにオモロイ書き手がでてきたもの、と感心した。
この稿を書き終えてから気が付いた。
著者の名前、どこかで聞いたことがあると思ったら、以前に石平 v 安田峰俊『天安門三十年 中国はどうなる?』(育鵬社)を書評していた。
評者の記憶力減退は脳の老衰なのか。
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>縦椅子様 本日も更新有難うございます。
>>安田峰俊さん
宮崎さんのご紹介に拠れば、宮崎さんの行動力も、スーパーマンレベルだと思いますが、その宮崎さんが、その宮崎さんが舌を巻く程のスーパーマンぶりです。
先ず、感じたのは、その発想の面白さだと思います、独裁政権下のルアンダでは、流石に政権からの直接取材は無理ですカラ、現地に進出しているシナ系企業の責任者の処へ押しかけて、その取材内容から、ルアンダの現状を極めて現実的な視点で、憶測や類推と判定される様な深度を超えたレベルで現状の発信を狙ったのでは、無いでしょうか。
そうした、深部にピンポイントで切りこんでゆく、彼の取材方法は、シナ勢力のおおもとを握って居ると言う噂の、洪門会に及んだが、その実態は噂と違って、老人の茶話会クラブだったと言う拍子抜けの取材もあるのは、逆にリアリテイを感じますね、
郭文貴と言う、トランプ大統領の参謀役の、ステイーブ・バノンと繋がりのある、ジャーナリストにも辿り着くが、其処から、現在進行中の香港大乱の裏には、伝えられている勢力とは全く別の勢力も、関係して居る事をすっぱ抜いて居る。
それは、香港島の先住民だと言うから、全く意外な話で有ろうが、普通に考えて、自分達が暮らして居る島に乗り込んで来て、有無を言わさず、島の北側の開発を進めたが、それが、島の南側に棲む漁業を生業にして居る先住民に齎した利益など、極、僅かに過ぎないだろう。
香港の機能が停まって終った現在、鬱積した不満が爆発しても可笑しくない、と言う「背景の先読み」が有ったのでは無いだろうか、是は「他の身になって考える」仏教の「利他心」の発露だと考えれば、お寺の息子らしい発想なのかも知れ無い。
こうして安田さんの行動を見て居れば、シナ情報の第一人者である宮崎さんに「新進気鋭のシナ・ウオッチャー」と紹介されるダケの事は有る様に、思いますね。
この先のシナは、未だ、攻め手の安倍・トランプチームが、終戦宣言を出して居無い時点では、政体も様々な説があって、先が全く読めない状態にある。
唯、一つ言えるのは、赤盾はシナ人を、もう信用して居無い士、共産主義者を支援する事も無いと言う事でしょう。
彼が、目指して居るのは、相も変わらず、世界経済の支配でしょうが、古の様な地域的な破壊が齎す、復興活動に拠る経済の刺激は、火器の破壊力の飛躍的な増大に拠って、逆に復興不能に陥り、経済の減速処か、国家消滅の可能性の方が高くなって居る。
特に、自力の技術開発能力が欠落している、共産圏国家は、生産物の需要が亡くなったり、設備が老朽化して、新製品を創りだせなくなると、忽ち、工場は機能し無くなる、其れは、嘗ては超大国だったソ連を引き継いだロシアが、今や、地下資源輸出頼みのGDP世界11位の中進国に甘んじて居る事や、朝鮮に戦前日本が遺した重化学プラントを全く生かせなかった事を観ても分るだろう。
最近の共産シナの科学技術が突出しているのは、米国からの先端技術情報の剽窃があるからだし、抑々シナの経済的急成長は、米国市場で優遇されて来たからだろう。全て、米国頼み、米国に寄生して居たと言うべきシナですが、是を過大評価して居る日本の論客が多いのには、辟易します。
数十年に亘って日本を使ってシナ上げを画策したのが、DR一派で有った事は論を俟たないことですが、DR無き後も、まるで亡霊の様に、その存在を意識している事に、思考の慣性力を感じますね。 これを評して曰く、情弱にしか見えません。
この先の安田さんの行動は、赤盾の意図が奈辺にあるのかを、郭文貴~バノンの線を手掛かりにして、その裏幕を解き明かして、是等情弱者野鼻を明かしてくれることを期待します、勿論、赤盾の名前を一切出す事無くですがね。
投稿: ナポレオン・ソロ | 2019年10月 9日 (水) 05時42分