民衆政治democracyの呪縛
ーー以下「宮崎正弘ブログ書評」より抜粋編集
岡部伸『イギリスの失敗』(PHP新書)
英国では、国民投票でEUから離脱するとしたのに一向に決まらず、政権が揺れている。
なぜ揉め続けるのか。
岡辺氏は、国民により選挙された議員による政治つまりdemocracyが機能不全になっているからだとする。
ーー
EU残留派は、「(議員の多数が離脱を拒否しているのだから)多数の意見を尊重するのが民衆政治だ、考えを変えろ」と主張。
反対に離脱派は残留派について「国民投票で決まった民意を無視(するな)」と言う。
これは国民投票の結果である議会の残留の意思と、国民投票による国民の離脱への意思が違ってしまった結果起こったことだ。
ーー
「英国は離脱交渉では、EUが最後に折れて、『いいとこ取り』ができると過信していたフシがある」
「(英国は)共通通貨ユーロに入らず、シェンゲン協定にも加わらず、半身の姿勢で経済の合理性のみを目的に参加してきた」
(シェンゲン協定とは、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)
岡部氏は『(英国は)EUで最大の軍事力、諜報力(インテリジェンス)を有する重要な国なので、交渉も優位に進められると考えていた』ようだが、それは幻想にすぎなかった、と分析する(P35)。
ーー
というのも、議会の議員の勢力図がかつての保守党と労働党の二大政党からすっかり変わってしまったからだ。
英独立党UKIP、EU離脱党、自由民主党が大躍進し、保守党、労働党の支持率がどん底近くになっていたのだ。
「二大政党制は崩壊したとも言える」状況が生まれた(P44)。
ーー
英国第一を掲げるEU離脱党が第一党なのである。
そのうえ内政では『移民』が、外交では『共産支那』が英国政治の混乱に拍車をかけたのである。
英国はAIIBへの参加をいち早く表明するなど北京とのビジネスに前のめりになっていた。
これが尾を引いて英政権は、トランプ政権が進める共産支那敵視に対して、軌を一にできなかったのだ。
ーー
ジョンソン首相はもともと離脱派ではなかった。
彼は党利党略から、残留派から離脱派に乗り換えた。
日和見したのだ。
だから彼の弟は閣僚を辞任し、反対派へ馳せ参じた。
ーー
離脱組の考えを後押ししているのは、『ジャッカルの日』『オデッサ・ファイル』『戦争犬たち』で著名な作家フレデリック・フォーサイスである。
かれは昔から「欧州懐疑派」として知られており、EU本部を「頑迷なブリュッセル」と批判し、4月26日のディリーエクスプレス紙に再度寄稿して、こう主張した。
「混乱しているブレグジッドは至って簡単である」
「英国の歴史上、最も大きな国民投票(民主的選択)をしてEUから抜けること、主権を取り戻すことを決めたのである」
「(国民は)EUに跪く隷属ではなく、立ち上がって自ら国を取り戻すこと(に決めたのだ)」(P117)
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「英国は一度も戦争に負けたことがない」
(大東亜戦争緒線で日本海軍に大敗北を喫したことは、その後、連合国として日本に勝ったので敗戦には加えない)
「だからEU本部に従属することなど、その自負心が許さない」
「それが英国民の決断だったではないか」
とフォーサイスは英国人に訴えた。
ーー
一方で英国は、着実に、米英同盟の強化、日本重視(台湾海峡へ空母派遣など)、そして移民排斥へと舵を切った。
直近までの英国の政治の流れを適確かつ端的にまとめた本である。
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>縦椅子様 本日も更新有難うございます。
>>ブリグジットを巡る英国の混乱
読んで居て思わず笑って終った、英国の政界の現状が、丸で1960~の日本の政界の様子と、酷似して来たからです。
「民主政治は、二大政党体制が理想だ」とか、言う説は謬説であると言う証明で、もう一つの二大政党体制の大である、米国は、シナの調略に拠って金塗れになって終い、共和党と民主党の境目が着かない程の、大政翼賛化が進行して居た、と見るべきで、要因は「シナの調略」である。
大政翼賛化「=政党政治の死」だと、私は思って居るので、日本にも戦前、是が起こった事を見出せるが、その要因は「戦争への外的な強制力」だった。
英国の政界の場合、混乱の原因は、国民投票と議会制民主主義の二重規範に有る事は、明白でしょう。
国民投票主義「=直接民主義」は、例えば、沖縄でもやっているが、日本では、単なる、住民ヒステリーとしか、捉えられて居無い。
何故なら、最初から「住民投票の結果は、国家や地方行政体の行政判断に優先するものでは無い」と断って居るカラである。
だが、英国では、どうも違うらしい、其処には前述の様な、明確な縦分けが為されて居無いと言う混乱があるのではないか、一体、英国では、議会と国民投票のどちらを優先して考えて居るのか? この混乱の原因は、英国の国民の民族構成が、戦後大きく変化した事に、起因しているモノと思われます。
つまり、戦後、独立した旧植民地国は、自国内と同じ言語を使える、嘗ての宗主国が、教育や都市機能の面で優れて居るので、して居の留学先として、或いは、就職先として宗主国の企業に勤めるものが多く、結果、宗主国内は、多民族状態になって行きます。
是は、植民地を多く持っていた、旧欧州列強「=英仏蘭を始めとする欧州各国」に云える事だろうから、戦前世界の遺産だとも云える現象でしょう。
処が、こうして、流れでや民族国家になって終った、元々、ゲルマン支配の国々にありがちな、選民主義、白人優越観、キリスト教絶対主義は、他民族の移民たちには、馴染まないのは当然です。
その数が社会に多くなり始めれば、社会自体が変質し始めて、社会常識や放棄では無い範囲のルール、感性に違和感を覚える、宗主国国民が移民に対する嫌悪感を、内に秘めて居る場合が良く有る様に思う、例えば、昔のトルコ遺民に対するネオ・ナチス運動なども、その表れでしょう。
この現象の原因は、国民の多様化の速度が、2世代未満と言う速さに問題が有るとは思いますが、シナの様に、異民族の混淆が無秩序の状態で、4千年も続いた結果、モザイク状の国家になって終って、最早、道徳や良識での秩序の維持は到底無理で、情け容赦ない強制力しか国家を維持して行く術は無い状態になる事が予想されます。
因みにシナでは、国民は自衛の為に、自分の決族同士で固める宗族主義に走っています。 この国家喪失状態とも言える状態は、多民族国家では、必然的な現象に思えますので、何れ、米国にも現れる現象なのかもしれません。
然し、作家のフォーサイスが、議会制民主主義よりも直接民主主義の方を、選択したとは、驚きでした。 オソラク、彼も、移民の声が強くなり始めた、英国議会を見捨てて、未だ、数の上では、アングロ・サクソン人の方が多い、イングランドやウエールもの国民投票に賭けたのだろうw
然し、白人種の少子化には、文明化に拠る少子化以外の人種的要因も働いて居る可能性が有るので、国民投票も10年後なら逆転していたでしょう。
私は、EU経済の牽引車であったドイツの「シナと共倒れ」現象の結果、リーマン・ショックの痛手がまだ残って居るEU諸国が、崩壊するのは、必然になると思いますので、英国もEUから離脱して独自の道を探る方が賢明だと思います。。
新たな市場として、この先、没落するシナに、代わって台頭し始める、東南アジアやインドを中心と下南アジアへの進出を、大英連邦を活用して、経済進出を進めるべきだと思いますね。
但し今度は、宗教と武力をセットにした侵略者としてでは無く、現地国の繁栄を高め、市場を拡大して、自分も恩恵を受ける「植林思想」をベースにしたモノで、緩やかに行うべきでしょう、時代は変わっていかねば、人類は死に絶えてしまうのです。
投稿: ナポレオン・ソロ | 2019年9月14日 (土) 10時00分