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2018年10月17日 (水)

不確実性との戦いにどうすれば勝てるのか

ーー以下「宮崎正弘ブログ書評」より抜粋編集

堂下哲郎『作戦司令部の意思決定 米軍「統合ドクトリン」で勝利する』(並木書房)

「つねに起こる想定外の出来事にどう対処するか」

「そして不確実性との戦いにどうすれば勝てるのか」

これは、なにも軍隊だけに適用されるのではない。

ーー

著者は海上自衛隊艦隊司令部、米軍中央軍司令部をはじめ、統合司令部の現場で多くの作戦計画と実践を経験してきた。

最後に横須賀方面総監をされ退官された。

ーー

最初に『戦略』『作戦』『戦術』の定義がなされている。

作戦をどのように導き、完成させるのか。

完成した作戦をどのように実行するのか、それが作戦計画であり、それを実行することで勝利を得る。

勝利を得る過程についても詳しく述べられている。

ーー

最終章は「意思決定を阻害する落とし穴」と題しての教訓が述べられている。

その「落とし穴」とは具体的に何か?

ーー

第一の範疇は「個人に起因する要因」である。

個人が論理上、誤り易い状況が指摘されている。

ーー

情勢が緊迫している状況で、兵力の展開や増強が、果たして『抑止』になるのか、『挑発』となって戦闘の拡大に到るか。

一般的には連鎖反応を怖れ、反論を封じ、あるいは恐怖に訴えることや、過度の単純化などが誤謬となる。

ーー

情勢判断に期待は禁物だが、既存の判断を補強する解釈に流れやすい。

これが「追認期待(バイアス)」で、重要な情報を過小評価しやすい。

都合の良い期待に基づき作戦を続行すると過ちに陥り負ける。

ーー

また情勢が変化しているのに、それを無視して突進すれば、非論理的行動となり、負ける。

ーー

例えば投資ではこれだけ投資したのだから損はできないと考えてしまう。

これは「埋没費用期待(バイアス)」と呼ばれ、損切りが出来ないため負けてしまう。

ーー

「無意識的な前提、歴史的類推、思考の枠組み」から生じる「分析、計画作業で意図しないかたちで姿をあらわす」期待。

これが「隠れた前提期待(バイアス)」であり、負けのもととなる。

ーー

第二の範疇は「ミラーイメージング」と「自文化中心主義」による間違いである。

「(司令官が)属する文化、民族を基準としてほかの文化を否定的に判断したり、低く評価してしまい」

「結果として、敵の能力を過小評価し、根拠のない自信過剰に陥り判断を誤る」

ことが往々にして発生する。

ーー

日本の官僚機構に顕著な省益優先や、机上の空論が好きな「有識者会議」での失敗の例が山ほど例示される。

これは、机上で作り上げられた政策でこうなるはずという期待から生じる「政策期待(バイアス)」であり、専門家による判断が逆の結果をもたらす「専門性パラドックス」である。

ーー

もうひとつ負けをもたらす大きな要素は心理である。

過剰な自信や過度の悲観は負けをもたらす。

ーー

また「時間的制約」がもたらす情報過多、視野狭窄、便宜解決、追加情報期待、そして「過度に一つの情報に引きづられてしまう失敗」、弁舌の優勢などが「落とし穴」である。

ーー

米軍の統合原則(ドクトリン)には、これらの個人原因に加えて「組織、集団」の落とし穴と問題集団(レッドチーム)の存在が述べられている。

組織、組織における個人、そして指導者の個性、属性などをどうすれば、勝てるようにできるかが詳述されている。

軍隊のみならず、広く政府、官庁、会社、民間団体そのほかに対する、合理的・科学的に適用可能な指導要領が並んでいる。

あらゆる分野の指導者に大いに参考になるだろう。

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コメント

>縦椅子様 本日も更新有難うございます。
>>現場の指揮を与るものの心得
 この話を読んで居たら、卑近な例で申し訳ないのですが、「敗戦の個人的要因」は、昔良くやった博奕の心理を言い表して居る様に感じました。

 著者が、バイアス「=指向性の在る圧力」と言うのは、博奕が「慾と二人連れ」のゲームだし、目の前で、現金が無為に消えて行くのは、一種の「金に対する報復」の様な自虐的なもので、最初の裡は、負けても平然として居ますが、或る程度、負けが込んでくると、「取り返したい」と言うバイアスが生まれますが、抑々、博奕をするなら全戦全勝なんてありえないので、「取り返したい」と思うのなら、最初から博奕なんかしなければ良いのです。飽く迄、本気の勝負は、最終的には勝た無ければ、意味が有りません。 ですから博奕は「遊び」なのです。

 博奕には、「流れ」と言うものが存在し、「ツキが回って来た」とか「ツキが逃げた」と言う繰り返しの流れを読んで、大きく賭ける時期を探る、是も、勝負事の醍醐味だと、昔の知り合いが云っていましたww

 唯、この著者は、実際の戦闘を想定して、計画を練り、実戦を指揮する立場の人ですから、彼の判断一つで、大勢の命が護られたり、逆に失われたりするので、その意思決定には、客観性の保持は当然乍ら、著者が言って居る様に、偶発的・突発的な不測の事が起こるのが。現場の通例で有り、そういう可能性は常に、想定内に置いておかねばならないのは、私も船舶の修理現場を指揮して居たので、分る部分が有ります。 

 現場の指揮官に求められるのは、基本的な知見と客観的な状況把握は勿論ですが、先ず、日頃から、自分を識る事を心掛けるべきです。「思い込み」や「経験を過信」、「評価間違い」は、実際に目の前に結果として現れなければ。亦は、現れても、結果が良い方向に収まれば、過ちを修正する事が出来ません。

 「小過を以て改たむるは、大過を逃れる最良の途」である事を、私も幾度も経験しました。 「失敗は反省を促すが、成功は安堵しか生まない」事の危うさを、幾度も味わいましたww 

 孫氏に曰く「己を知り、敵を知らば、百戦危うからず」なのは、何時の時代にもいえる事ですからね。

 斯うした、勝負が懸った現場で、勝ち抜くには、著者が言うつに、客観的な、状況把握力や敵、或いは、味方の戦略や戦力・技能の評価が、十全だったとしても、相手も同じように「事前に出きる事は、すべてやって居る」と想定して措かなければ、いぇま船が、情況は時々刻々変化しているので、想定も、併せて変えて行かねばなりません。 そして、誰も予想しない事が突然起こる。

 是が実戦の難しさであり、その対応力の如何とタイミング「=運」に拠って、勝敗が決する事が多いですね。

 是が、古代シナや日本の戦国時代の戦いで得た、色々な教訓や気付きを纏めた、戦記が、後世、好まれた理由でしょうし、そういう歴史から学ぼうとしても、米国では、歴史の長さが足りない。 其処で米軍は、是迄の実戦から学んできた事を、今回纏めて、更に科学的な解析を加えて、米支戦の必勝を期したのでしょう。

 こういう話は、兵器のスペックだけで、勝敗の優劣を語って居る、現場を経験して居ない「軍事マニア」には、判らないでしょうね。

物事、何をやるにも目的があれば、これを実現するために「戦略」、「作戦」、「戦術」があると思います。
そして、常に起こる想定外の事柄に対しては、ばたばたした現場の中で慌てることのないようにと、事前の冷静なときに考えられる想定外のことを考え出し、これにいくつもの処理パターンを考えておくと、突発的な出来事に慌てることなく対応できる筈なのです。

尤も、現場では事前の冷静な場所での検討とは異なって、騒然とした場所での行動になりますから、思う程上手く行かないことは付きまといますけれど、それでも、冷静な中での検討は大切だと思います。

戦争計画ではありませんけれど、事前に検討していたのに、突然起こった事柄に慌てふためいて、最低の結果を残したのが東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故でした。
現場では、吉田所長以下の職員は安全を優先に考えたくても、危険な事柄をとんでもない事故現場で処理していたのですが、首相は事前に原子力災害の訓練をしていたにも関わらず、これを完全に忘却、政府の面々も同様に初めての事故として慌てふためいての対応をしました。

尤も不味いのは、その後にも責任を取らないことで、責任を取らない上司の下では、部下は十分な働きが出来ないものです。
勿論、このときの上司とは首相一人ではなく、政府の重要ポストにいた全員が、役に立たなかったと言うことだと思います。

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