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2017年8月10日 (木)

赤は共産党を象徴する色でもあり、全体主義の犠牲となって流された夥しい血の色でもある

ーー以下「宮崎正弘ブログ、書評(評者浅野正美)」より抜粋編集qazx

宮崎正弘『日本が全体主義に陥る日』(ビジネス社)

著者は全体主義を以下のように定義する。

「それは自らが信じる絶対的な価値観しか認めず他者の考え方を否定し、排撃し、排斥する、一つの強固な考え方に基づいて全体を統一することだろう」

だから政治思想でいえば、共産主義も社会主義も全体主義であり、ヒトラーのナチスも、軍事独裁的なファシズムも全体主義なのである。

そしてキリスト教もイスラム教もユダヤ教も一神教であるがゆえに全体主義なのである

敵対者には容赦がない。

ーー

「全体主義=共産主義の悪性ウイルスは世界中にばらまかれ、あちこちに愚考が繰り返され」た。

「日本は海洋国家であり、多神教であるがゆえにユーラシアが体験した全体主義とは無縁でいられた」 

ソ連崩壊以降、全体主義はその本質を隠して、世界をグローバリズムという一神教的思考で統一しようとした。

そして今、世界的規模で反グローバリズムの大潮流が起きている。

しかし「全体主義との戦いはまだまだ続く」のである。

ーー

1989年、ポーランドに起こった反革命運動は、瞬く間に東欧諸国に広がり、ルーマニアのチャウシェスクは公開処刑され、ベルリンの壁は破壊された。

その二年後1991年にはソ連邦が崩壊し、自由主義陣営が勝利の美酒に酔いしれた。

レナード・バーンスタインは、旧東ドイツ・ドレスデンでの祝賀コンサートでベートーヴェンの第九交響曲を指揮した。

第四楽章では、歌詞のフロイデ(歓喜)を、フライハイト(自由)と替えて歌わせた。

その場に居たほとんどの人が自由の勝利を無邪気に喜び、平和の到来を信じた。

ーー

このときこれを見た日本の左翼は煩悶したのか。

青春を共産主義社会実現のために捧げた身であるならば、ソ連邦崩壊の様を目の当たりにし絶望したのではないか。

続々と自殺者が出るのではないか、例え死ななくとも心身に変調を来し、ある者は神経症(ノイローゼ)になり、またある者は癈人となる例が続出するのではないか。

しかし彼らは実にあっけらかんとして前言を翻すこともなく、平然とその後の時代を生き抜いた。

(このことからも彼らはサヨクではなく単なる反日勢力であることが分る)

ーー

一方、共産主義を徹底的に批判してきた人たちは、この歴史のドラマに触発され、思索し、行動した。

その内の一人が西尾幹二氏であった。

1989年のベルリンの壁崩壊後から程なくして西尾氏が東欧諸国の知識人と交わした激論は、「全体主義の呪い」と題して一冊の分厚い本に収められた。

そして、本書の著者である宮崎氏は、ベルリンの壁が落ちる前後をベルリンで過ごし、開放のその時をその目で目撃していた。

著者は今回の東欧への旅に西尾氏の「全体主義の呪い」を持参したと書いている。

ーー

本書ではさらに二冊の書物が紹介されている。

それは、「ドナウの旅人」(宮本輝著)と「憂国者たち」(三輪太郎著)である。

ーー

「ドナウの旅人」はこの大河に沿ってドイツの源流からルーマニアを経て黒海に注ぐまでの風景と、その3000kmを旅する人を描いた長編小説である。

不倫の道行物で、朝日新聞に連載された娯楽小説だ。

この小説が書かれたのは80年代の前半であり、まだユーゴスラビアという国が存在していた。

物語はそのユーゴスラビアがあったバルカン半島での描写も多い。

ーー

「憂国者たち」の方は、そのバルカン半島でセルビアの政治指導者として活躍し、最後は投獄されたカラジッチと三島由紀夫とのつながりを、二人の日本人大学生を絡めて描いた小説だ。

宮崎氏はこの書物にほんの少しだけ登場する初老の右翼に注目している。

「純粋な右翼道を求める初老の紳士は高田馬場の小さな雑居ビルに清楚に暮らしながらも日本のあるべき姿を追い求め、日夜、和歌を詠んでいる」

「本棚には三島の最後のテープも納められていた」

「作者(三輪太郎氏)は特定のモデルはおらず、複数の右翼団体を錯綜させて造形したという」

「元「重遠社」代表で三島研究会事務局長だった三浦重周風でもある」

三浦重周氏と著者(宮崎)は思想的同志として、早稲田大学に在籍していた時代から、右派学生運動に挺身していた。

三島由紀夫亡き後は、その思想と行動を継承すべく毎年の命日に開催されている「憂国忌」を二人三脚で支えてきた間柄である。

その三浦重周氏も自決した

ーー

1989年のベルリンには、人類史に特大の活字で記されるであろう歴史の瞬間があった。

宮崎氏には、その現場に立ち会いたいという好奇心もあったであろう。

しかし宮崎氏は、学生時代から一貫した保守思想の持ち主で、三島由紀夫の思想と行動に心酔し、愛国者として生きてきた。

それ故に、氏自身が信じる生きる理由(raison d'etreレゾンデートル)を、確認する意味もあったのではなかったかと思う。
 
ーー

今日のバルカンの悲劇を予感させる小説に、ヨゼフ・ロートの「ラデツキー行進曲」がある。

オーストリア・ハンガリー帝国の崩壊を、惜別の念をもって歌い上げた、帝国にある種の敬意(オマージュ)を捧げる作品だ。

が、カラジッチもまた、チトーのような融合国家を目指した政治家だった。

そのカラジッチが悪の代名詞のように糾弾され、戦犯の汚名を着せられた。

これは欧米の書いた筋書きによるものだった。

ーー

民族浄化(ethnic cleansing)というおぞましい標語を発明したのは、米国の「戦争広告代理店」であることが本書には書かれている。

そして、大東亜戦争が日本に一方的責任があるとして戦勝国から裁かれた東京裁判と似ていると続いている。

旧ユーゴの章はこんな文章で終わっている。

「絶えず戦雲に覆われるバルカン半島、行方は多難と言わざるを得ない」

ーー

本書の特徴の第一に上げられるのは、なんと言っても豊富な写真の数々である。

多色刷りで31枚と、本文中に挟まれた100枚を越す写真によって、読者は簡単に行くことのできない遠い外国々の様子を見ることができる。

そして、文章からも写真からも、著者の眼差しがそれぞれの地に暮らす庶民に注がれていることが良くわかる。

どんな服装をして、どんな物を食べているかという、人間の幸福の第一条件が実に良く観察されているのである。

ーー

著者の旅はいつでもそうだが、旅行業者が決して案内しないような路地に入り込み、その地に暮らす人々の息遣いを肌で感じて来る。

そして、そうした人々と同じ店で食をし、現地の人に気軽に話しかけもする。

夜の街にも積極的に出掛けては、そこで働く従業員の悩みや夢や希望や絶望に耳を傾ける。

なぜかみな、著者の前では胸襟を開いて本音を語るのである。

案内本には載っていないもう一つのお国振りが、こうした取材によって浮き上がって来るのである。

ーー

二度、三度と訪れた国では、政治体制の変遷と共に、そこで暮らす人々が以前よりも幸福になったであろうかという視点を著者は常に忘れない。

普段から国際政治を果断に分析し、いち早く正しい予測を下す著者の印象とは、冷たい知識人という一面が強いのではないかと思う。

しかし、人間を見つめる氏の眼差しはいつでも暖かい。

そうした資質を著者にもたらしたものとは、膨大な読書であろう。

古今の文学作品を読むことによって、人間性の本質に対する感性が涵養されたのではいかと思う。

ーー

もう一点の注目すべき記述として、「全体主義国家からの転換、成功組、失敗組星取り表」がある。

これは、著者の主観に基づいた30か国における
「脱全体主義のその後」のありさまを、
・政治体制
・市場経済
・言論の自由
・国民の生活水準
の四項目についてそれぞれ・優・良・可・不可・最悪
の五段階で採点した一覧表である。

ーー

終章では、本書の題である「日本が全体主義に陥る日」についての警告が述べられている。

「日本ばかりか世界中で言語空間はおかしくなり」混乱している。

その隙を突くようにして全体主義者らは、「反戦」「反原発」「環境」「男女賃金格差」「同性愛結婚」「ヘイトスピーチ」などいかがわしい(面妖な)言葉を使い、洗脳を継続している。

全体主義者(無国籍者)には本物の芸術作品が生まれない悲劇を指摘した後、本書は次の言葉で結ばれている。

「全体主義の呪いはむしろ現代の日本に残留しているのではないか」

ーー

本書のカバーを外したら、全体が真っ赤に装丁されていた。

赤は共産党を象徴する色でもあり、全体主義の犠牲となって流された夥しい血の色でもある。

表紙の中央には、表にウイーン、裏にはワルシャワの写真が、掛け軸のように縦長に画像加工されてはめ込まれている。

考えすぎかもしれないが、どちらの都市も、近現代の欧州転変を象徴する場所だった。

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