自由貿易は民衆政治democracyを破壊する
ーー「宮崎正弘ブログ、読者の声4」より抜粋編集
中野剛志『富国と強兵―地政経済学序説』(東洋経済新報社)
共産支那は自由貿易国を装って実際は保護主義路線を歩んできた。
これを読めば、そんな北京がなぜ「保護主義反対」なのかが理解できます。
保護主義には大きな利点があるからなのです。
ーー
ケインズの自由貿易論批判は以下です。
1.自由貿易は国内政治や経済生活を混乱させるため、平和や平等の理想は達成し得ない。
2.特化で良いものを安く供給できるが、国内で供給される生産物の多様性を減じる。
3.固有の文化が、画一化された自由貿易によって破壊されかねない。
ーー
このケインズの批判にもかかわらず、自由貿易が平和と国際協調をもたらし、戦争を抑止すると信じられている。
特に1930年代の世界恐慌時、各国による利己的な保護主義の連鎖が、世界経済を崩壊させ、それが世界大戦の要因となったと広く信じられている。
自由貿易論者からすれば、保護主義を受け入れることは歴史の教訓を無視するものだということになろう。
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しかし、まさに第一次世界大戦の直前、ドイツにとってイギリスは最大の貿易相手国であり、イギリスにとってもドイツは第二位の貿易相手国であったのである。
また、1930年代、日本とアメリカの対立が深まっていったにもかかわらず、日米貿易は1941年まで悪影響を受けなかった。
また1930年代の保護主義の連鎖についても、それが世界経済に与えた打撃はわずかなものに過ぎなかったことが明らかになっている。
というのも高関税や貿易制限により需要は一方的に減少するわけではなく、むしろそれによって内需が拡大する分もあるからである。
この歴史は、自由貿易が平和を保障するものではなく、また逆の保護主義が戦争を引き起こすものでもないということを示している。
ーー
マッキンダーは自由貿易による特化のせいで特定の産業を失った国家こそが、その獲得を巡って世界で他国と競合し、他国を犠牲にすることになるのだと論じた。
各国ごとのつり合いの取れた経済発展という経済国家の理念は、国際協調や国際平和のためにも必要なのであると主張した。
そして自由貿易論者からの批判に対してはこう答えた。
「あらゆる特化には、死の種が含まれている。
一部の産業に特化したような国家の国民は、その産業のことしか知り得ず、物事を一面的にしかとらえられない貧困な精神をもつようになるだろう。
そのような国民は、国家や国際資本の権力に隷属するしかない存在となる。
自由放任や自由貿易による特化は、確かに生産の効率性や低コスト化を実現するであろうが、その結果、豊かな人間性と民衆による自治が犠牲になる」
ーー
要するに、自由貿易は民衆政治democracyを破壊するのだ。
ーー
「国民経済のバランスのとれた成長とは、国家全体が自治的な地域共同体から構成されることで可能となる。
国家は、資本家階級の利益や労働者階級の利益といった、特定階級の利益によって代表されるべきではない。
国家が階級や利益によって分断されたら、民衆による自治は不可能になり、国民の自立も困難になる。
もし、国民国家が特定の階級の利益によって分断されることとなると、その階級は、必然的に、他国における同じ階級と利益を共有するようになる。
階級が、国境を超えて結びつくのである」
自由貿易とは、今日で言う「ひと、もの、カネ」の自由化(グローバリゼーション)である。
マッキンダーは、グローバリゼーションを民衆政治を破壊するものとして警戒する。(SSA生)
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